ナノバイオインターフェイス技術NANO-BIO INTERFACE

温度応答性ポリマーがナノメートルレベルで固定化された表面

当社製品アップセル/UpCell®の表面はポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)がナノメートルレベルで均一に固定化されたものです。当社はPIPAAmを器材表面に精密に固定化することで、ポリマーそのものが持つ下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution temperature, LCST)を境にして起きる水中での相転移挙動を器材表面の性質の変化に転換することに成功いたしました。固定化されたPIPAAmは細胞を培養しているときにおいても、細胞をはがすときにおいても器材表面から全く遊離しません。このような器材表面へのポリマーの精密な固定化は電子線を利用することで初めて可能となりました。

ナノバイオインターフェイスのメカニズム

PIPAAmはLCSTが32℃のポリマーで、それが水中で遊離されていますと32℃以上の温度でポリマー鎖が凝集し水中で分離してしまい、32℃より低い温度ですと水分子と結合し溶解します。このポリマーを器材表面へナノスケールで固定化しますと、32℃以上の温度の水(※)に触れた器材表面のポリマー鎖も同じように凝縮し、器材表面の性質としましてはPIPAAmポリマー鎖そのものの性質が強くなります。一方、器材表面が32℃以下の温度の水*に接しますと、表面のポリマー鎖は水分子と水和し、器材表面の性質としましては、32℃以上の温度のときの表面に比べ親水性を示すことになります。一般的に細胞は適度な疎水性表面に付着しやすく、親水性表面に付着しない性質を持っています。当社はPIPAAmをナノスケールで均一に固定化することで、通常37℃で行われる細胞培養時では一般的な器材と同じように適度な疎水性表面とさせ、培養温度が32℃以下にするだけで培養細胞が付着できない親水性表面へ変えられることに成功しました。

細胞を培養するための培地使用時でも同様な現象が起きます。

細胞シート工学の基盤となるナノバイオインターフェイス

このナノバイオインターフェイスであれば、培養した細胞を従来のような酵素を使わずに培養温度を変えるだけではがすことができるようになります。培養細胞は酵素処理を受けておりませんので、細胞と細胞との間に存在する接着性タンパク質が破壊されておらず、培養細胞は一枚のシートとして得られます。また、培養中に細胞と器材表面との間に形成された接着性タンパク質も保持しているため、細胞シートは生体組織へ速やかに生着し、細胞シート同志を積層化させることもできます。しかも、その細胞シートは酵素処理によって細胞本来の機能も失われることなく保持しております。ナノバイオインターフェイスは細胞シート工学に必須な基盤技術であります。

さまざま器材表面への展開

こうしたナノバイオインターフェイスは当社の表面設計技術により初めて完成されました。当社はこの技術を活用することで、細胞回収用の表面を有したレプセル/RepCell®、細胞を全く付着させない表面を有したハイドロセル/HydroCellTM®などの製品を開発しております。